演奏だけで作り上げたポストロック : The Six Parts Sevenという静かな達成
post-rockというジャンルがある。多重レイヤーの音が絡み合い、ギターが幾重にも重なり、通常のバンド編成では不可能なはずのテクスチャーが広がる音楽だ。Godspeed You! Black EmperorやMogwaiが世界的な評価を得て以降、このジャンルはある種の「壮大さ」と結びついて語られることが多い。スタジオで音を積み上げ、エフェクトを重ね、DAWで緻密に構築された音の建築物——それがpost-rockのひとつの定型になった。
だが、オハイオ州Kentから現れたバンド、The Six Parts Sevenはまったく異なるやり方でそれをやってのけた。
人間が集まって、音を鳴らした
The Six Parts Sevenは1995年、KarpinskiブラザーズのAllen(ギター)とJay(ドラム)によって結成された。1997年にギタリストのTim Gerakが加わり、以降はメンバーが流動しながらも核となる三人を中心に活動を続けた。
このバンドの楽器編成が独特だった。複数のクリーントーン(歪みなし)エレキギター、ベース、ドラム。そこにエレクトリック・ラップスティールギター、ビブラフォン、グランドピアノ、ときにビオラやトランペットまで加わる。コードをかき鳴らすのではなく、それぞれの楽器が単音のメロディラインを担い、それが絡み合うことでサウンドが立ち上がる。
重要なのは、これがDAWによる多重録音ではなく、実際に複数のミュージシャンがスタジオに集まって演奏した音だということだ。2004年のアルバム Everywhere and Right Here はクリーブランドのMagnetic Northスタジオで録音されている。ライブ映像がほとんど残っていないため、その全貌を映像で確認することは難しい。だが少なくとも、DAWで何十テイクも録り直して組み上げたような音ではない。人間が部屋に集まり、耳を傾け合いながら鳴らした音がそのまま作品になっている——その手触りが、このバンドの音楽の本質だ。
Suicide Squeeze Records、そして静寂
The Six Parts Sevenが在籍したSuicide Squeeze Recordsは、1996年にシアトルで設立されたインディーレーベルだ。Elliott SmithやModest Mouseのシングルから始まり、The Black Keys、Russian Circles、Iron & Wineなども名を連ねた、インディー界では誠実な評価を得るレーベルだった。
それでも、The Six Parts Sevenの音楽は届かなかった。
NPRの報道番組 All Things Considered のBGMや転換音楽として彼らの曲が使われていたという事実が、その立ち位置を象徴している。音楽は流れた。でも名前は残らなかった。あるレビュアーはこう書いている——「ボーカリストがいないせいで、このバンドはいつも見過ごされてきた。Sigur Rósがあれほど人気なのは、誰もアイスランド語を理解できなくてもヴォーカリストの存在がある種の引力を生むからだ。Six Parts Sevenがその見えない線を越えられるかどうか、私にはわからない」と。
2008年、バンドは活動休止状態に入った。
Everywhere and Right Here(2004)
このアルバムが彼らの到達点だ。8曲、いずれもインストゥルメンタル。5分を超える曲が多く、反復とわずかな変化によって聴き手を静かに深いところへ連れていく。
「What You Love You Must Love Now」「Already Elsewhere」「A Blueprint of Something Never Finished」——曲名自体が詩のように機能している。音だけで語り、音だけで余韻を残す。ラップスティールの甘い音色、ビブラフォンの澄んだ響き、複数のギターが作る立体的なハーモニー。これだけの楽器を、エレクトロニクスに頼らず人間の演奏で成立させている。
合わせて聴くべき作品
Things Shaped in Passing(2002)はSuicide Squeeze移籍後の初作。ヴァイナルは500枚限定プレスという小さなリリースながら、Discogsでは「インストゥルメンタル・ロック史上最も重要なアルバムのひとつ」という声もある。ラップスティールとピアノが加わり、バンドのサウンドが最初に完成した形で記録された一枚だ。AV Clubはこのアルバムを「注意深く聴く者にとっては、荒涼としながらも美しい風景への短い精神的な旅」と評した。
Casually Smashed to Pieces(2007)は最後のスタジオアルバム。シアトルのStudio Lithioとオハイオのアクロンで録音され、多くのゲストミュージシャンを迎えた集大成的な作品。バンドはこの翌年に活動休止に入る。
大きな声で語られることなく、しかし確かな完成度とともに存在した音楽がある。The Six Parts Sevenはそういうバンドだった。


