現れて、消えた——smougというバンドのこと
日本のポストロック・シーンには、ある時期に忽然と現れ、素晴らしい演奏を残しながら、いつの間にか気配を絶ってしまったバンドがいる。smougはその代表格だと思う。
smougとは何者か
smougは2006年頃、富山のポストロック・バンドinterior palette toeshoesのメンバー2人によるサイドプロジェクトとして始まった。その後、富山・東京・広島と拠点の異なるメンバーによる編成へと広がり、場所や形態に応じて姿を変えながら活動を続けてきた。
音楽的には、ドラムとサンプラーを軸にしたビート、アナログ感のあるウォームな電子音、浮遊感のあるシンセ、ギターのなだらかなアルペジオを組み合わせたインストゥルメンタル編成のエレクトロニカ+ポストロック。Hood、epic45、Mercury Program、The Album Leafといった2000年代初頭の欧米ポストロックの残響を受け継ぎながら、日本の宅録/ローファイな質感も同居している。
2013年、東京のPreco Recordsから1stアルバム『Cloud Sprout』を発表。翌2014年には、Ametsub、Cuushe、mergrim、ausという日本のエレクトロニカ/エレクトロニック・ミュージック・シーンを代表する面々がリミックスを手がけた『DO NOT DISTURB』をTOKEI RECORDSからリリースし、同年の『EMAF TOKYO』にも出演している。2015年末には2ndアルバム『FOLK REMEDY』、2017年にはmiaouとの7インチスプリット『MOU!』、2018年には鋳物メーカー・能作とのコラボレーションによる3rdアルバム『CAST』を発表するなど、着実に作品を重ねてきたバンドでもある。
4つのライブ映像
音源だけでなく、smougの魅力がもっとも鮮やかに立ち上がるのはライブ映像だと思う。ここでは、彼らの演奏を伝える4本の映像を紹介したい。
EMAF TOKYO 2014 「Hail to you」
「Hail To You」は『DO NOT DISTURB』に収められた楽曲で、バンドセットでの演奏。フェスという場でありながら、音数を絞ったビートの反復の上に、ギターとシンセの旋律が少しずつ層を重ねていく構成が丁寧に鳴らされている。
MOU! TOUR 2017.7.8 O-NEST 「Sleepy Time」
miaouとのスプリット盤『MOU!』を携えたツアーからの一幕。タイトルの通り、まどろむようなテンポ感の中で、生演奏ならではの微妙な揺らぎがサンプラーのビートと絡み合う様子が見える。
SOHOLM CAFEでのライブ
小さなカフェ空間での演奏。フェスやライブハウスとは異なる、部屋の空気ごと録られたような親密な距離感の中で、彼らの音楽が本来持っている室内楽的な繊細さがよく伝わってくる映像だ。
京都「いつまでも世界は...」
京都でのライブ映像。タイトルに掲げられた言葉の通り、どこか儚さを湛えたトーンで進行する演奏で、smougというバンドの叙情的な側面がもっとも色濃く出ている一本だと思う。
今、smougを聴くには
これだけの音楽を作り、鳴らしてきたバンドでありながら、smougは現在Apple Musicなどのサブスクリプション・サービスでは配信されていない。今、彼らの演奏に触れる手段は、ここに挙げたようなYouTube上のライブ映像を辿るか、あるいはLinus Recordsのようなキュレーションの行き届いたショップでCDを探し当てるか、そのどちらかしかないというのが実情だ。実は彼らの最初のアルバムのほうが素晴らしい、More Recordsここで見つけられた。
配信という形で残らなかったからこそ、余計にこの4本の映像は貴重に思える。忽然と現れ、静かに気配を絶っていったバンドの記録として、記憶しておきたい。



