私の愛用しているB&Oのスピーカー

みなさんはスピーカーに何を使っていますか?私が愛用しているのは、Bang & OlufsenのBeosound A5です。

ただし、正直に言うと最初の印象は違った。箱から出して最初に鳴らしたとき、高音と低音が強調されたいわゆるドンシャリ型の音に聞こえ、このスピーカーの評判と自分の耳の感覚が一致しなかった。ところが数十時間ほど鳴らしていくうちに——いつからとは言えないが——低音域から高音域までのつながりが非常に滑らかになり、印象がガラリと変わった。これがエージング(慣らし運転)による変化なのか、耳が慣れたのかは断言できないが、いずれにせよ今の音には満足している。購入直後に判断を急がず、しばらく鳴らし続けることをすすめたい。

デンマークの老舗オーディオブランドBang & Olufsenが2023年にリリースしたポータブルスピーカー、Beosound A5。価格は25万円を超える。ポータブルスピーカーとしては異例の価格帯だが、このスピーカーには納得させるだけの理由がある。

Beosound A5

スペック

ドライバー5.25インチ ウーファー×1、2インチ フルレンジ×2、3/4インチ ツイーター×1
アンプクラスD 70W×4(合計280W)
周波数特性32Hz〜23,000Hz
接続Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3、AirPlay 2、Chromecast built-in、Spotify Connect
バッテリー連続再生約12時間、充電約3時間
防水・防塵IP65
サイズ28.5×18.7×13cm
重量約3.7kg

音の話

32Hzから23,000Hzという広い周波数特性を、合計280Wのクラスアンプが駆動する。このサイズのポータブルスピーカーとしては破格のスペックで、低域の沈み込みから高域の繊細な表現まで、音域の全体を過不足なく鳴らす。

普段はポストクラシカルや環境音楽、アンビエントを中心に、ポストロック、アンビエントテクノ、現代ジャズまで幅広く聴いている。繊細な音楽ほどスピーカーの素直さが問われるが、Beosound A5は余計な色付けをせず、録音に込められたニュアンスをそのまま届けてくれる。ポストロックの轟音も、テクノの低域の圧も、ジャズのシンバルの倍音も、同じ一台で破綻なく鳴らせる。

全音域にわたってフラットに近い特性を持つため、楽器を弾くときのモニタースピーカーとしても十分に機能する。USB-C端子経由でPCに接続してオーディオ出力として使うことも可能で、ワイヤレス接続に縛られない柔軟な使い方ができる。

BluetoothとWi-Fi——接続方式で音質は大きく変わる

Beosound A5はBluetoothとWi-Fiの両方に対応しているが、接続方式によって音質に大きな差が生じる。

Bluetoothはそもそも帯域が非常に狭い。プロトコルのオーバーヘッドを差し引いた実効帯域は1Mbps以下で、CDクオリティ(16bit/44.1kHz)の非圧縮ストリームが必要とする1,411kbpsにすら届かない。そのためBluetoothで音声を送るには必ず非可逆圧縮が入る。iPhoneが対応するのはSBCと最大256kbpsのAACのみで、AndroidやソニーデバイスがサポートするLDAC(最大990kbps)やaptXには対応していない。つまりiPhoneからBluetoothで送った時点で、音源のクオリティに関わらずAAC 256kbps相当に劣化する。

一方Wi-Fi接続では帯域の制約がほぼなく、音声データをそのまま送ることができる。AirPlay 2は24bit/48kHzまでのロスレス伝送に対応しており、ALAC(Apple Lossless)のファイルを劣化なく届けられる。Chromecast built-inはさらに24bit/96kHzまで対応するが、iOSのApple Musicアプリには現時点でCastボタンがなく、AndroidかPCからでないと利用できない制約がある。

Wi-Fi接続とBluetooth接続の差は「好みの問題」ではなく、数字で裏付けられた音質の差だ。せっかくロスレス音源を持っているなら、Wi-Fi接続で聴くことを強くすすめる。

(ちなみにBluetoothスピーカーでaux接続があるものがお使いの方は、今すぐaux接続に切り替えることをお薦めする。コードが邪魔になっても、それだけBluetoothは音の面で劣る。)

セパレートスピーカーなしで部屋が鳴る理由

Beosound A5はモノラルの一体型スピーカーだが、セパレートのステレオシステムがなくても部屋全体が音で満たされる感覚がある。これは背面に配置された2基のフルレンジドライバーによるものだ。

仕組みはこうだ。前面にウーファーとツイーターを配置し、背面の左右コーナーに2インチのフルレンジドライバーを2基追加することで、音が前方だけでなく後方・側方にも放射される。後方に向かった音は壁や天井に反射して部屋中に広がり、スピーカーの位置を意識させない「空間に満ちた音」として聴き手に届く。これが360度サウンドと呼ばれるOmniモードの原理だ。

通常のステレオスピーカーは左右のスピーカーの中間に定位した音像(スイートスポット)を作り出す。正確な音場再現という点ではそちらが優れているが、部屋のどこにいても均質に音が届くわけではない。Beosound A5のOmniモードは音場の厳密な再現よりも「空間全体への拡散」を優先した設計で、どの位置に置いても、どの角度から聴いても音が自然に届く。

B&OアプリではOmniモードと前方指向のFrontモードを切り替えられる。じっくり聴き込みたいときはFrontモード、部屋全体に音楽を流したいときはOmniモードと使い分けられる。私は普段Omniモードで使っている。一台で部屋ごと鳴らせるこの感覚が、セパレートシステムへの未練を感じさせない。

小型で、バッテリーで動く

このスピーカーを選んだ理由のひとつが、持ち運びの自由さだ。木製のハンドルを持てば家中どこへでも運べる。寝室に持ち込んで、バッテリー駆動で音楽を聴きながら眠る——そういう使い方ができる。コンセントや配線の都合に縛られない。

IP65の防水・防塵性能を備えているので、屋外に持ち出すこともできる。

試聴するなら、この一曲を

購入を検討している方には、ぜひB&Oのショールームに足を運んで試聴してほしい。

そのときに持っていく音源として、Max Richterの「Shadow Journal」をおすすめしたい。低域から高域まで広い音域を使った録音で、弦の繊細なテクスチャーと重厚な低音が同居している。このスピーカーが全音域にわたって均質に、かつ力強く鳴らせることを、よく確かめられる一曲だと思う。

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デザインと長期的な付き合い

Beosound A5のデザインはデンマーク・イタリアのデザインユニットGamFratesiによるもので、1960年代のB&O製品から受け継いだ丸みと木のハンドルが特徴的だ。

私はOakモデルを使っているが、木材部分の美しさは高級家具に近い。この木製ハンドルとカバーはデンマークの家族経営の木工工房で一点ずつ手仕上げされており、量産品にはない個体ごとの木目のゆらぎがある。B&O自身も「完全な均一性は人工的に見える」として、あえて木目の自然な差異を活かす方針をとっている。精密ミリングされたアルミフレームと手仕上げのオーク材の組み合わせは、音を出す道具というよりインテリアの一部として部屋に置ける佇まいをつくっている。

また、モジュラー設計により部品交換やソフトウェアアップデートで長く使い続けられる設計になっている。「高い買い物を長く使う」という思想がスピーカー本体の設計にも反映されている点が、このブランドらしいと感じる。

買い替えるのではなく、育てていく道具として。そういう意味でも、Beosound A5は私の音楽生活に馴染んでいる。